農村飲料水汚染問題

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2003年8月に大妻女子大学の藤本悦子教授を中心とするグループが楡林地区にはいり、日本から持参したパックテストにより水質検査を行なった。この結果、この地域の水質汚染が深刻なものとなっていることが判明した。もともとは良質の地下水に恵まれていることで有名な楡林市内は言うにおよばず、山間部の農村の井戸ですら化学物質によって著しく汚染されている。化学的汚れの指標であるCODの水準が30~40ppmという結果がいくつもの井戸で得られたが、この水準は日本の下水道や大都市を流れる河川の下流の水準である。藤森がその後おこなった調査では、パックテストのCOD測定値は、4割方低く出ると推定されており、実際の数値はもっと高いものと考えられる。(藤本・土肥 2004)


この汚染の原因は、農地に大量に投入される化学肥料と合成洗剤であると考えられる。化学肥料は土地面積あたりで、日本の十倍以上が投入される場合があり、合成洗剤も衣服一枚あたり数十倍が使用されていると推定される。また、黄土が乾燥すると固まり、水に触れると容易に溶けるという性質があることから、地下にスポンジ状とも言うべき無数のトンネルを持つことも地下水汚染に関連していると考えられる。地表の水は濾過されることなく、このトンネルを通って地下水に流れ込んでしまうのである。つまり、黄土高原の井戸水はいわゆる地下水ではなく、雨水や生活汚水がそのまま地下に滞留したものである可能性が高い。

Before ==> After
地面をスコップで掘って水を入れると、水は風呂の栓を抜いたように、小さなトンネルに流れ込む。


我々はこの問題を重視し、米脂県の共産党委員会と県政府に働きかけ、同県の婦女聯合会を主体として日本大使館の草の根無償援助プログラムに「陝西省米脂県農村飲用水和城市糞尿無害化項目」を申請した。この計画では、県城に小清水式糞尿処理装置を設置して都市の糞尿問題を解決すると同時に、この処理装置が産出する有機肥料を農村部に送り届けて化学肥料を代替し、農地の汚染を軽減するものである。また、この計画には簡単なパックテストを用いた住民自身による水質検査、合成洗剤の重曹電解水による代替、活性炭による水浄化を盛り込んでいる。
 この計画に対して2003年12月末に67.7万元の資金供与が決定した。2004年の2月17日に大使館の荻野憲一一等書記官(当時)が米脂県を訪れ、調印式が行われた。調印式には西安から外弁の国際交流中心の四名が派遣され、楡林市から李涛米脂県担当副市長が参加した。副市長はこの儀礼の最中にこのプロジェクトの重要性に鑑みて、5万元を供与すると提案した(但し、2004年9月時点でもこの5万元は残念ながら振り込まれていない)。

調印式で演説の機会を得た深尾は、国共内戦時代に米脂県楊家溝村に共産党の本部が置かれ、ここから国民党への反攻が始まった歴史的事実に言及し、生態と文化を回復させることで豊かな社会を作り出す、新しい生態革命の反攻もまたこの地から始めるべきである、と指摘した。また、そのための第一歩が有機物循環の回復による水の浄化であり、このプロジェクトはその理念に沿って構成されている、と説明した。この言説は申請過程で婦女聯に対して繰り返し説明してきたものであり、折宝翠主席の演説にも同趣旨の議論が盛り込まれており、これ以降の活動でもこの種の言説が利用されている。


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このプロジェクトを推進するために、2004年3月~9月にかけて、会田伸子がボランティアで楊家溝村に滞在し、水質調査を中心とした活動を展開した。会田は婦女聯と大使館との折衝をはじめ、現地とのインターフェイスの役割を果し、このプロジェクトの推進に大きく貢献した。2004年9月時点では、ほぼ活動が完了する段階に入っている。糞尿処理装置の第二号機は既に順調に稼動しており、会田を中心とする20村200箇所の井戸・河川の水質調査は、4~5月、6~7月、8~9月の三回にわたって行われ、秋季に最後の調査が実施される予定である。

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